Little AngelPretty devil
   
         〜ルイヒル年の差パラレル 番外編

   “金月秋麗”

           *R−15くらいでしょうか。BL系のそういう場面のみのSSです。
             淫靡な描写がお嫌いな方は自己判断でお避け下さいませ。
 


今が盛りか、草間からしきりと聞こえる虫らの声が、
りいりいと鳴けば鳴くほど、静けさともの寂しさをも煽り立て。
さっきまではそれほどでもなかったはずが、
迎えられた懐ろの広さや温かさ、
肌に馴染んで心地いい、相手の男臭くも精悍な匂いが、
ああ寒かったのだと、
頬や耳朶の冷えようを、あらためて蛭魔へ自覚させる。
擦り寄ったそのまま、
少しほど相手の膝へ乗り上がるように身を伸ばしたこちらを、
胸倉の余裕の深みが迎え入れ、
肩を背中をくるむよに、長い腕が回されて。

 「ん…。」

見上げたそのまま、こちらの頬に触れて来たのは、
向こうの、やはり頬であり。
自分と違ってやや堅い肌は、だが、
髭が生えない質なのか、なめらかさでは変わらないかも。
愛おしむように頬への頬擦りで撫でられて、
そのまま口元までを探り当てられる。
意志の強さに凛と引き締まった見た目と裏腹、
意外なくらいやわらかな唇だと、本人は気がついているのだろうか。

 「ん…っ。」

咬み合うように…貪り合うよに、互いに食
(は)んでのずれた隙間から、
ぬるりとした肉芽がすべり込んで来て、こちらの肉薄な舌を搦め捕る。
ざらとした感触は一瞬で、すぐにも境目が判らなくなってしまい、
ちゅくりと水音が立ったのへ、知らず背条が慄くように震え、
それを拾ったか、背中へ伏せられていた葉柱の大きな手に、
仄かに力が籠もったような。

  ―― 逃げやしないのに。

怯えてもないし、恐れてもないのに、何だよそれ。
むしろ向こうがそれらを示して見せたような気がして、
この図体でそれはなかろうと、
可愛らしさへの苦笑が零れそうになる蛭魔だったが、

 “あ…。///////"

虚を突いたつもりなんかはなかったらしい、
もう片やの手が腰から下へと撫で下ろされた感触へ、
ひくっと再び、今度は肩が揺れたので、

 「…今更怖えぇのか?」
 「〜〜〜バカヤロ。//////////」

わざわざ唇を離しての問いかけへ、
たいそう至近から“んなワケねぇだろ”と言い返す。
何の他意も無いそれ、
抱え上げようとして膝裏まで手を降ろしただけの所作だってのに、
それへと蛭魔が…生娘みたいに飛び上がったと思ったらしい。
だよなと呟き、ふっと笑った男臭さが、
口元の格好といい、細められた目許といい、
粗野なのに頼もしいやら雄々しいやらで、

 “〜〜〜っ。////////”

  何だよ、これ。
  なんで俺、こんな顔が熱いんだ?
  尻に触られたくらいで跳ね上がる、生娘とやっぱ変わんねぇじゃんか。

その頼もしい懐ろに、ぐいと引き上げられての抱えられ、
なめらかな線のおとがいやら、
ごつごつした隆起がなまめかしい喉元やらを、
すぐの至近から見上げる恰好になったのが、
何でだろうか、やっぱり照れ臭く。

 「…どした?」
 「〜〜〜。」

かぶりを振る頭がいやに至近だ。
不意に腕を伸ばして来ての、首っ玉へとしがみついて来た蛭魔であり、
幼子のすがりつくよな甘え方にも似ていた素振りへ、

 “ほれみろ、やっぱ寒かったんじゃねぇか。”

……まあ、そういうことにしといてあげて下さいな。




几帳を立て回した奥の寝間は、
敷いたというより ばら撒いた感のある小袖の海になっており。
確か 此処が寝間ですという区切りにと、茣蓙が敷かれてあったはずだが、
これではその陰さえ伺えない。
まま、それはいつものことなので置くとして。
両腕が愛しい痩躯を抱えることで塞がっていても、
なんら支障がないまま、床へと膝を落としてしまえる屈強な君は。
足元の方だけを降ろして差し上げた御主が動き出さぬをいいことに、
しなだれた肢体の重みや存在感を、しばらくほど、腕と膝に抱えたままで堪能し。

 「………。」
 「蛭魔?」

声をかければゆっくりと、
伏せられていた目線と一緒にお顔のほうも上げてくれた、うら若き御主の、
薄闇の中でも透明感を失わぬ、金の明け星のような瞳をそおと見つめる。
先程の戸惑っていたかのような様子も今は落ち着き、
だが、今度は別の感情…羞恥と求めとが綯い混ぜになったような落ち着きのなさが、
淡色の睫毛を揺らしており。
よしか?と目線で訊けば、

 「…。」

わざわざ訊くなと言いたいか、口許を尖らせかかって、
だが、拒みはしないので。
形のいい緋色の唇へ、再びの口づけを落とした葉柱で。
金茶の眸を据えた目許といい、細い鼻梁や耳に顎、
どこもかしこも形こそ鋭角だのに、触れれば脆くて柔らかで。
その落差の最たるところがこの口許だ。
日頃あれほどの憎まれをきくくせに、
にやりと笑えば尖った犬歯が覗いての、
いかにも恐ろしい感のある冷淡そうな口許だのに。
こうして触れればあっさりと押し潰されてしまい、
そのやわらかさの何と愛しいことよ。
ぴちゃりと濡れた音が立ったその響きが、
そのまま葉柱の聴覚を通じて頭ごと煮えさせてしまいそうになり、

 「ん…。/////////」

長い口づけに酔ってのことか、蛭魔の腕が徐々に萎えてゆき、
首へ搦められていたものが落ちかかったのへ気がついて、
やっと解放してやれば。
赤々と濡れたその口許から、くふ、と小さな吐息が洩れた。
熱に浮いてのどこか陶然とした目許は、とろりと力なく。
そのまま小袖の重なりの中へと降ろしてやれば、
絹の冷えた感触へ気づいてだろう、肩越しに頬擦りをし、
そんな所作が、夜陰の中へと白い喉元をあらわにさせる。
こんな半端で済む筈はないところへの、そんな素振りは甘いお誘いでしかなくて。
床へと肘をつきつつ、葉柱がその痩躯へと覆いかぶされば、
気配や熱に気づいたか、
見上げて来た双眸が、どこか悪戯っぽく笑っての迎え入れ、
片腕伸ばして来ると、式神殿の頬をするりと撫でる。

 “なあ。
  こんなして組み敷いてもまだ、俺の許しを待つつもりか?”

ダメだと言えば、そのまま手を引き、身を引いて諦めてしまうよな、
そんな奴だと判っているのが、
誇らしいときもあれば…焦れったいときもあって。
いやだと邪険に振り払ったことが、なかった訳じゃあないけれど。
だめだと言いつつ、そうじゃないときも、
それと気づいてたって手を出さないのはどうなんだろか。

 “律義も度が過ぎりゃあ、ただの愚鈍だぞ。”

卑屈な男じゃあないことは知っている。
となると、もしやして…駆け引きのうちだろか。

 「…。////////」

見下ろして来る深色の視線に耐えられなくなり、
眸を伏せればそれを読んでか、
ふわりと精悍な匂いが降りて来る。
そんな察しの良さを持つくせにと、悪態ついてやりたかったが、

 「…ん。/////」

首の肌に吸いつかれたその熱さとそれから、
自分の腿のあたりへ触れた、張り詰めかかっているものの感触とが、
さあっという熱を伝えて、総身の血を煮えさせる。
首から離れた唇からの、ほうという吐息が胸元へとこぼれた感触も愛おしく、
袷の懐ろ、そのまま割り開かれても、
もはや抗いの小理屈は出て来なくって。
背へと差し込まれた腕は、この身を浮かせ、
慣れた手際で袷の着付けをほどいていって。
「…っ。」
その間にも、熱く濡れた感触が肌に触れ、
愛しい愛しいという呪文で余す事なく埋めたいか、
なするような口づけがいつまでも降り落とされており。

 「あ…っあぁ…は…。」

胸元に尖り始めた小さな肉芽の引っ掛かり。
それを指の腹が弄
(いら)い始めれば、
薄く開いた口許からは、
隠しようのない…悦にまみれた甘い喘ぎが引き出され。
自分の放った声だというのがさすがに恥ずかしく、
横を向いてのやり過ごそうとするものの、

 「あ…っ。///////」

熱い舌先が捏ねるように触れて来るに至っては、
節が折れるほどきつく立てた指を搦ませて、
その憎たらしい覇者の黒髪、掻き回してやるくらいでしか、もはや抗えず。

 「あ、や…、は、ばしら…。」

く、く、と息を詰め、総身を浚う愉悦の波をやり過ごそうとする苦悶の白面が、
額や頬に乱れた髪をまといつけ、目尻や首元に朱を浮かべ、
凄絶なまでに妖しくもなまめかしく見えて。
日頃の甘やかしや傲慢さへの仇を取りたいワケじゃあないものの、
苦しげな声や乱れようが、それだけでこちらの身のうちを煽り立てるのが、

 “雄の浅ましさってやつだろか。”

辛そうなばかりだった表情が、少しずつ趣きを変えてゆく。
帯を引き抜き、緩んだ袴を難なくはだけて、
脇から腰、腿へと、ほぼ直線でしかない肉づきを、
それでも愛しくてならぬと優しく押し撫でての愛でておれば、

 「ん…。//////」

武骨なばかりの堅い手の、不器用なばかりの触れようだのに、
切なげに身をよじり、せぐりあげるような呼吸を震わせる。
そちらからも取り込みたいか、
こちらの頭や肩、しきりと撫で回しての引き寄せ始めていて。

 「あ…あぁ…やぁ……。////////」

込み上げる感覚に身をゆだね始めたらしく、
その苦悦のお顔が、だが、まだどこか口惜しげで。
屈することとなるのが嫌か、
それとも気恥ずかしさが最後の牙城を守って退かぬのか。

 「…。」

ぎゅうと瞑られた目許へと、身を伸ばしての口づけを落とし、
ふっと息をついて開かれた双眸から、ほろりと零れたしずくを、
指の腹で交互に受け止め、拭ってやれば、

 「…。////////」

やっとのこと呼吸を思い出したように、
上下し出した薄い胸元を、まるでこちらへと差し出すように、
両腕を伸ばして来ると葉柱の頑健な首へとすがりついた蛭魔であり。

  ―― まだ、寒いぞ。

こそり、耳元へ囁かれた一言が、最後の意地だとするならば。
答えを待っての身を離し、こちらを見上げる眼差しへ、
くすんと笑って差し上げて。


  「我を忘れるほどがお望みか?」
  「………バカヤロ。///////」


精一杯の悪態も、合わさった唇ごと飲み込まれてしまい、
抱きすくめた腕が器用にも、袷を剥いての素肌をさらさせ、
それと入れ替えるよに素早くも、自身の熱い肌にてくるんでくれて。
眩暈がするほどの充実にひたされた身から、
淫靡な指先でじわじわと熱を引き出されるに任せておれば。
鎖骨の縁や脾腹の隅、
うなじと髪の境は吐息で温めるだけでいいとか、
内肢は さっと撫で下ろせば、
「ひぁ…っ。」
慄いてのつい、高い声を出すとかいう、
蛭魔以上に知り尽くしたその身をじっくりと愛で始め。

 「あ…ぁあ…、や…。」

身じろぎが大きくなっての、声にも蜜の甘さが増して。
やわらかな肌にはしっとりと汗が浮き、
葉柱の躯へと上げておれなくなった手が、
すべり落ちた床の上、手近な小袖を掴んでの、
指の節を白く浮き上がらせている様は、
いかに激しい嵐が、その身のうちに荒れ狂っているかを忍ばせて。
悪戯の手を止め、同じ手で堅く育った果実を包み込めば、
今更のようにふいと視線を逸らすのが、得も言われず愛おしい。
無論、そっぽなんて向かせておかぬ。

 「…んっ…。///////」

緩緩と指をうねらせ、堅い指先で熱塊を擦れば、
途端に息を詰め、噛みしめた奥歯をぎりと鳴らした蛭魔であり。
強情を張るのを許さずに、容赦なく追い詰めてゆけば、

 「……っ!」

息を詰めての、びくりと震えた痩躯が…やがてはゆるやかに弛緩する。
荒く乱れた呼吸を聞きつつ、
片腕だけで十分抱え込める痩躯を懐ろ深くへと押し込むと、
腰から撫で下ろして到達した窄まりへ、指を押し込みゆるゆるとほぐす。
肌を重ねて随分になっても、どこかで緊張するものなのか、
腕の中の柔らかな熱は、
ふるりと震えてから その身へしなやかな芯を取り戻したけれど。
「…。」
自分からも男の懐ろへ手を伏せると、落ち着き始めた呼吸を数えているだけ。
ん、ん、と息を詰める声が洩れるだけで、抗う気配もないし、見上げても来ない。
そのまま幾度か指での往復を繰り返していると、

 「ん…ん…ぁ…。////////」

懐ろへと閉じ込めた人が再びの喘ぎを紡ぎ始める。
ぐいと、奥まったところのしこりを衝けば、

 「あ…っ。///////」

笛の音のような悲鳴を上げて、しがみついて来るので 頃はよし。
腿へと膝を割り込ませると、
膝裏を掬い上げるようにして抱え上げ、躊躇なくの斟酌もせず、
細腰を掴み、その身を一気に押し進めてやれば。

 「あ…………あぁ…っ。」

上がった声は絶え絶えとか細くて。
だが、迎えた秘所はあまりに熱く、蕩けるように柔らかい。
もはや慣れ切っての十分に熟れた躯だと示すよに、
押し込まれる堅い熱塊を、ぎゅうぎゅうと絞り上げ、取り込まんと もてなしており。

 「は…あ…っ、あ………んぅ…。////////」

は、は、と、どこか獣じみた短い呼吸を零しつつ、
それでも先には堕ちぬと、何とか耐える気丈さが、腰を抱いてる手へと伝わる。
見下ろした表情は切なげで、
押し寄せる苦悦にしかめられていながらも、
その今にも折れそうな、
意気地だけにすがっているような線の細さが、
雄の嗜虐を誘うには十分な蠱惑に満ちており。

 “…危ねぇ奴。”

こうまで追い込まれること自体、そうそう有りはしなかろが、
そんでもその顔は危険だぞと、お仕置きついでの罰のよに、
容赦なく身を進め、もっともっとと追い上げて、

 「あ…、や…ぁ……。//////////」

こちらの腕へすがった手。
本能でか爪を立てての引きはがそうとしかかったのへ、
わざとに強く身を押し込めば。

   ―― あ…………、と。

声はなくの、口を丸く開いたまま、その身が堅く強ばって。
こちらも限界、その内へと放ちつつ、
弓なりになった痩躯をぎゅうと思い切り抱きすくめてやれば。
乱れる余力さえ出ないのか、
指が折れるのではないかと思ったほどのしゃにむさで、
全部の指でこっちの腕をぎゅうと掴みしめて来て。
溺れさせはしない、攫わせはしないからと、
ますますの力強さで抱けば ようやく、
どこへもやるなよ? 約したぞ?と、
こちらの翼下へ身を投げて来る強情な君が、やはり愛しいとは。


  “病膏肓とはこれを言うのかな。”




  夜陰の中にて蠢く熱の、健気なほどの浅ましさ。
  穹に漂う月影だけが、涼しげに見下ろしてござったそうな……。




  〜Fine〜  08.10.05.


  *唐突な奴ですいません。
   こちらまで書くつもりはなかったのですが、
   まま勢いという奴でして。
   ちなみに、こちらは
   昨日の晴天はどこへやらという冷たい雨の中です。
   寒すぎてもなかなか書きづらいもんですね、盛り上がりとか。
(こらこら)

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